KEIZAI KAI

本物の難民が1割しか認められていない現実

Keizai Kai – August 27, 2002 経済界142

天下の正論 巷の暴論 
日本は外国人労働者に対する規串叫を緩和し、経済などあらゆるメリットを享受しろ 

犯罪を企てる不法入国者 阻止こそ重大な岡題


本物の難民が1割しか認められていない現実

5月8日に起きた瀋陽の日本総領事館の事件を受けて、法務省は難民政策検討委員会を設置した。筆者もそのメンバーであるが、そこでの議論を見ていると、あまり期待が持てそうにない。

 日本の正式なアプローチを批判しようというのではない。ほとんどの国と違い、難民に関する国連条約および議定書への調印国 として、日本は今なお正しい手続きを踏まねばならないと考えている。よって日本にいる外国人は誰でも(たとえ偽造パスポート所持やその他の違反で捕まったとしても)原則的には、開き直って難民であると申し立てさえすれば、自動的に正式な法の手続きを受ける権利を得られるようになっている。

 この手続きというのが実に丁重なもので、難民申請者にはその立場が合法的なものであることを示す文書が与えられ、それによって外国人登録証を受け取ることができる。この外国人登録証は多くの国内不法滞在者にとって貴重なものだ。これさえ手に入れば、難民申請者は好きなところに自由に住み、旅行し、仕事もできる。


 彼らが本物の難民かどうかを判断するため、時折面接の呼び出し状が届く。だがそのうち3分の1は呼び出しを無視して姿を消してしまう。呼び出しに応じる者でも、難民認定を下す前の面接を、優に1年以上も先延ばしすることができる。

 難民認定が認められない場合、申請者はさらに数年間に及ぶ訴訟を開始することができる。しかし大半は他国へ行ってしまう。難民として逃れて来たはずの母国へ帰って行く者さえいるのだ。

 難民申請者のうち、本物の難民として申請が認められるのは約1割にすぎないことについて批評家はとやかく言うが、このような背景を考えると認定率が1割と低いのも当然である。また批評家は、日本が負担している膨大な費用についても考えてみるべきである。特に、資料をさまぎまな言語に翻訳して出したり、面接のために常に適切な通訳を見つけたりしなければならないことをだ。それも、大多数はそもそも本物の難民ではないというのにである。

 同じ資金を費やすなら、犯罪を企てる不法入国者を入れないように努力するほうが、よほど日本のために役立つのではないだろうか。

 日本に批判されるべき点があるとすれば、それは海外の難民キャンプにいる本物の難民を受け入れようとしないことであろう。日本は国内にいる者からの申請しか受け付けないとしている。そもそも、「難民とは何か」という定義を考えて偽れば、難民申請をしようとはるばる日本までやって来られる人々が、本物の難民であることはほとんどないというのにである。

まじめな不法労働者を連行し倒産工場が出ていいのか


 難民申請者の多くは、外国でより良い生活をしたいと考えている経済難民だ。よって不法入国者として入団を拒絶されるケースがほとんどだが、その送還もまた問題となる。一方、きちんとした移民が安定的に日本へ入って来れば、日本には経済、文化、人口などいろいろな点でメリットがあることも明らかである。1994年に私は九州の森林地帯を訪れたが、そこは深刻な人手不足に悩んでいた。だが同じころ、そこからそう離れていない福岡県では、適法入国した数十人の元気な中国青年たちを国外退去させるために警察が一斉検挙を行い、マスコミもそれに拍手を送っているところだった。

 入国管理当局は東京都北部の金属工場から多数の不法労働者を連行し、本国へ強制送還している。たとえそれで倒産する工場が出ようと、全くおかまいなしだ。

 ひとつの解決法としては、日本が外国人労働者に対する規制を緩和し、不法な経済難民に対しても、合法的に日本への入団を求める人々と概ね同じ基準を適用することである。決定は迅速つ変更不可とする。移民基準に当てはまる者は国内滞在が許可され、当てはまらない者は(必要ならカづくでも)退去させる。

 これで本物の難民が不法な経済難民と誤認されたりしたら、それは酷かもしれない。だが国連が難民の窮状にぞれほど心を砕いているのなら、国連にもいささかの負担はあってしかるべきである。国連は世界中に難民キャンプを持っているのだから、認定を拒否された難民は、それらのキャンプのどこかひとつに送り届けてもらえるというオプションがあってもよいだろう。


グレゴリー・クラーク プロフィール/1936年イギリス生まれ。オックスフォード大
学修士課程修了。オーストラリア外務省、「ジ・オーストラリアン」紙東京支局長な
どを経て、79 年上智大学教授。95年多摩大学学長。現在、多摩大学名誉学長。